「うつ病」との診断自体が悪になる

個人や社会の問題が、不用意にうつ病に押し付けられているのをよく目にする。

一パターン目は、会社のゆがみが医療に押し付けられる例。
「柳井正は人として終わってる」を読んで
短い睡眠時間、理不尽な規則、先の見えない状況で働いたら、おかしくなるのは当然だろう。直すべきは当人じゃなくて会社のほうだ。当人は脳にダメージを負っている可能性はあって、そっちのほうは治療が必要かもしれないけれど、必要なのはそもそもの原因を断つことにあるのは間違いない。

ちなみに、あの業界で「うつ病」が多発しているらしいよ、というのは、ネット以外でもよく聞く。いわゆるブラック企業プログラマ業界で多い。複数の例の共通項を拾ってみると、やっぱり睡眠不足が応えているのではと感じる。従業員にまともな睡眠を取らせてないところはたいていブラックなので*1、睡眠不足とブラックぶりがダブルで利いている感がある。

蛇足だが、医者などは宿直とかするから睡眠がさぞ短いだろう、大丈夫なのか、と思っていたのだが、そうでもないらしい。患者の状態が変化したりするのを待ったり、いつもスタンバイしてなければならない、などのスタンバイ時間が多い、ということで、ちょこちょこ寝ているんだそう。

本題に戻る。二パターン目は、自分をゆううつにしている大本の問題に向き合わないまま、うつ病という病名で今の気分が説明されつくした気になって現状に居座る例。
不器用で内向的な人間が幸せに生きられる場所なんてこの世にない
確かにDSV-IVの分類におけるうつ病にはあてはまるのかもしれない。しかし、この人がうつ病の薬を飲んだら、うつな気分は吹き飛ぶんだろうか?結局、自分の能力と自分の希望する居場所が折り合わないわけだから、そこを懸命にすり合わせていくしか、この人の出口はないだろう。正直なところ視野が狭すぎだと思う。

両者とも、うつ病と診断がつくことで一時しのぎにはなるけれど、かえって本質的な解決は遠ざかっている。

*1:睡眠が不規則にならざるを得ない業界でも、まともなところならば、不規則なりにどこかで確保できるようにしている