教科書選び方・雑感など
医療系の学生がメインターゲットだが、たぶんほかの分野でもあてはまる。読む方は個人の偏見であることを忘れずに。
ほかの人のお勧め本や評判を聞く
割と医学生は「先輩」の話を真に受けがちなようだが、多くの「先輩」は大して信頼に値しないことをよく覚えておこう。単に自分の○年後の姿にすぎない。先輩の性格や、先輩自身の学習の深さを勘定に入れた上で、参考にするなら大いに役立つ。自分と似た先輩や、知識や学習態度のしっかりしている先輩の話はかなり参考になる。
ネットのレビューを見る
ネットの本のレビューだと、星の平均点が目立つところに表示されているが、あまり平均点を気にしても仕方がないということは強調しておきたい。その本に対して誤った期待をした人が低い点をつけたり、些細な瑕疵でひどく減点されたり、するものなので。一つひとつのレビューを読み、星の分布を見ると、いろいろなものが見えてくるはずだ。
図書館で実物を借りる・書店でめくってみる
本は高いのだし、せっかくだから実物にあたっておきたい。個人的には、フォント、レイアウト、写真の鮮やかさ、紙の質感、などなど、本としての存在感が、その本を好きになれるかを大きく左右するような気がする。
絵の有無
ゆるふわな絵がある本は低級、みたいな勘違いをしている学生もたまにみかけるが、まったくそんなことはない。ふざけたように見えるポンチ絵も、理解を助けるために役立っていたりする。内容が正しいか、本としてまともか、というのは、あくまで誰が書いているか、どう校正しているかに依存する。
関わっている人の人数
日本の場合、複数著者による本だと無味乾燥になったり、「割り当て分を書かされた」感が漂う情熱の感じられない本になったり、一つの本としてまとまらない感が出てしまうのが残念である。どうも編集側の権限が弱かったり、編集側にあまりポリシーがないことが原因だったりするっぽいとは聞いた。(例外もあると思います、と逃げておく。)欧米の本は複数で書いていても、全体として目指すところがはっきりしている本が多い。
シリーズものの評価
個人的には、シリーズものの日本の教科書はイケてないような気がする。本を作成したスタッフ側の意図が見えず、同じシリーズに属する本でも出来のばらつきが大きいことがおおい。 「病気が見える」はとてもいいけど*1。(基本的に、本の出来がばらばらってことは、編集が弱いってことですよね~)同じシリーズに属する本を割となんとなく買っている学生が多いけど、金がもったいない。
大学お勧めの本
大学が勧めているだけあり、安心ではあるだろう。大学推奨の本のどこが良いのか、聞いてみるのもよい。
時を経て変わること、変わらないこと
もちろん、医学においては*2教科書はすべて新しいのを使うのがよい。しかし、図書館の本もすべて新品ではないわけだし、古い本も気をつけた上で読めたほうがいいだろう。
たとえば、生化学は多少古い教科書を使っても変わらないだろうし、肉眼解剖学*3はそう簡単に変わってくれそうもない。一方、免疫学の変遷はすさまじい。二、三年でも景色がかなり変わってみえるから、最新の教科書を買ったほうがよいだろう。臨床の中でも、膠原病科や血液科になると古い教科書はあてにならない。そもそも病気自体の枠組みが違ってしまうことがあるので、ぜひ新しい教科書を手にしたい。
年月を重ねても比較的安定している科であっても、分子生物学的な知見とか、治療法(とりわけ癌)とか、ガイドラインであるとか、分類であるとかは、ネットなどで最新の情報を確認する必要があることは注意しておきたい。
誤植はある程度はやさしく見てあげて
わたしも翻訳本を出したことがある。
なので、翻訳本が実に些細な誤植でけなされているのを見ると、微妙な気分になる。理想としては、誤植はなくしたい。と思っている。あまり言い訳はできないと思っている。でも、出版社には刊行スケジュールがある。共同作業者が、自分の割り当てを締め切りどおりに求められたクオリティでこなしてくれるとは限らない。誤植があることが問題というよりは、誤植がないことがすごいといったほうがいい。もしあなたが誤植を見つけたなら、出版社に報告してあげよう。
てにをはの間違いとかは割とどうでもよい*4のだが、訳者が文章を理解していないような雰囲気の大はずれな誤訳や、専門用語の間違いが多発するのはあまりよろしくないサインである。