ペシャワールの少年 ~パキスタン 性犯罪の実態~

ペシャワールには大量に路上生活をしている少年がいるが、その90%は性的虐待にあっているということで、そのルポをNHK海外ドキュメンタリーでやっていた。日本の性犯罪を取り囲む状況についても、いろいろと参考になるところがあるので、記録。

ペシャワールの少年 〜パキスタン 性犯罪の実態〜|BS世界のドキュメンタリー|NHK BS1

パキスタンでは少年をレイプすることが悪いことであるという規範がないとのことで、少年を無理やり犯したことのある成人男性たちは、顔を隠すこともなくインタビューに応じる。イスラム教の教えを「女性は夫の所有物であり、外に出ず家にずっといるべき」「女性とは紳士的な付き合いしかできず、自分の性欲は押さえられない以上、一緒にいても怪訝な目で見られることのない少年を犯すのは仕方がないこと」と考えているようだ。一人の男性は、自分がレイプに加わったことを、「本人が誘っていたのだから仕方なかった」と正当化する。イスラム教は同性愛をそもそも禁じているのだが、そのことは知らないらしい。*1自分は敬虔なイスラム教徒であるという意識で、妻としては家にこもりコーランを唱える女性を求める。既に妻帯者であり、子供が数人いる男も、性欲のはけ口に自分の子どもと同じような年の男の子を犯すことに葛藤はないようだ。イスラム教の性や女性に過度な抑圧的な教義のせいで、歪んだ形で性欲が発散されることになっている。そして、被害にあった少年の一部は口封じのため殺害される。

バス運転手は仮眠を野外の宿泊所でとる。ベッドが道路の上に並べてあり、経営者はそこで休む人から料金をとることで利益を得ているのだが、彼は少年の性的虐待の斡旋もしている。そこら辺の男の子に、寝床と食事を無料で提供してあげると誘い、運転手に提供しているのだ。運転手はもっぱら少年たちのレイプを人生の楽しみにしている。レイプの対象となる少年には、8〜9歳ぐらいのものもいる。

路上生活をする少年たちがたむろする地域は、麻薬中毒者の多い地域でもある。少年たちは、最初は何もわからないうちにレイプされ、嫌な思いをするが、そのうちに何も感じなくなる。すると、ただでやらせるのも損だというので、料金をとるようになる。そうこうしているうちに麻薬をすすめられ、依存になり、売春で薬代を稼ぐようになる。麻薬依存になっていなくても、ゴミ集めで生きていけなければ体を売ることになる。路上生活をしている少年たちを援助するNGOはあるのだが、資金不足のため昼に身を寄せる場所と簡単な食事しか用意できず、夜はそれぞれの場所に帰らざるをえない。

ルポでは一人の少年に焦点があたっていた。麻薬依存から抜け出せず体を売り続けている13歳の少年なのだが、どうもリストカットをしているようだ。怒りを自分に向けていると本人が話していた。もっと話を聞くと、最近9歳程度の別の少年を、頻繁に性犯罪の舞台となる映画館に連れ込み、いうことを聞かないから乱暴をふるったとのことだ。性犯罪の被害者が性犯罪の加害者になるのはよくあることである。この国で成人男性が少年をレイプすることに抵抗を持たないのも、自分が被害者になってきたからだ。結局、この少年はペシャワールに居続けると自殺の危険性があるということで、NGOの助けで薬物依存者更正施設に入ることができ、HIVの検査もネガティブだったということで、希望のあるラストになっていた。

*1:なお、同性愛禁止は同性愛者の差別につながるため、わたしはこの教義を支持していない。念のため。